ラジオマン
村を歩くと、いつも必ず出会うおじさんがいた。
サングラスをして麦わら帽子をかぶった、ちょっと太めなおじさんは、ブルースシンガーのようなしゃがれ声で、ずっと独り言を言っていた。
「今日は晴れ、子供が走っている。彼のお父さんは車を運転する人である」日照りの中を歩きながら、一人単調な調子で、あることないことつけ加えて、町で起こった出来事を語っている。
そして彼は言った。「イエーイ」
ひとりの実況放送。人は彼のことを「ラジオマン」と呼んだ。
彼は独自のラジオ局の局長兼、DJ、マイクも使わず、電気も使わずスポンサーもつけず、無償で営業していた。
もちろんだれのためでもなく自分のために。
特別ひとに迷惑をかけるわけでもなければ、彼の自由だ。
「今日はこの大学のことを実況中継いたします」
ある日、大学に用事があって行った時、彼が来てた。
「私はある事件の真相を確かめたいと思っています。それは、この村で一番の金持ちといわれている大学の校長のことです」
そんなことをアナウンスしながら一人校長室に入っていった。
彼は大きな帽子をかぶったまま、校長の不正に抗議して詰め寄っていた。
「私は中央情報局だが、あなたの不当な行いについて、私は特別な情報を持っている、これを世間に公表しようと思うがどうお考えですか?」
誰もが彼がクレージーなことはわかっているのだが、「中央」情報局とは恐れ入った。
訳のわからない問いかけに、いったいどうしたら帰ってくれるかと、何時間も彼の問いかけにまっこうから正直に、そんな噂はウソだと否定している。
それでもラジオマンの作り上げた情報は大声で何度も繰り返すので、信憑性を帯びてくる。
それを聞いている周りの人も、もしかすると本当にそうなのではないかと疑い始めた。
ラジオマンの声は、どんどん大きく荒くなって、一歩も引き下がろうとはしない。
困り果てた校長は、とうとうお金をいくらか彼に渡して、帰ってくれと頼む。
するとラジオマンも「この情報は流さないようにするべきだということが、今この場で決定された」と言って。
図太い声でぶつぶつと怒ったようにまたその状況を解説しながら、校長の部屋から出ていった、
「校長は渋々お金を渡した、彼の顔は怒ったままだった・・・」とかなんとか。
「ラジオマン」中央情報局。世界のはしっこで起こっているような出来事も、どこかで聞いたことのあるストーリーだ。
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2016.04.22 / Top↑
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