3年前、田んぼの脇に、出て来たシカを、斧持って追いかけ回していた自分。
都会から引っ越してきて、無農薬で米を作るのは、そう簡単なことではない。
苗を作り、田植機を隣人に借りて、やっと田植えして、すぐにシカの出没。
それからは、毎日シカの行動を見張り、竹で作った柵が壊されればすぐに補修する日々。
2mもある柵を跳び越えてくる、
周囲の田んぼより収穫が遅いので、他の田が収穫を終えてからが、勝負だ。
寝ていてもシカが鳴けば、外に出ていって懐中電灯を片手に田んぼを見回り、睡眠不足になりがちになる。
一年目は一反作っていた田の半分食べられ、二年目は三分の一くらいでなんとか押さえ、毎年シカのために働いていることにイライラしていた。
ある日、夜に車を運転していると、シカが二匹道の真ん中でケンカしていた。
僕はここぞとばかりにアクセルを吹かして、シカを追い回し、もう少しの所でひき殺してしまうところだった。
ブレーキを踏んで我に返った。
グレーの毛皮と丸い目がきれいだった・・・。
しばらく体中に悲しみがじわっと流れていくのを感じた。
どうして自分はこんなになってしまったのだろう。
僕の考えていた自然は、都会の中にある管理された自然だった。
実際自分の生死に関わる問題になってくると、とことん残酷で、やさしさなどかけらもなく余裕すらなくなっている。
こっちも必死だが、むこう(動物)も必死なのだ。
一瞬の猶予も許されない、待ったなしの世界。
町役場にシカ・イノシシ対策の補助を申請し、一年半がすぎてようやく鉄柵の材料が届いた。ご近所の方と三人で木を切り倒し、草を刈って、距離400m鉄柵を完成させた。
柱を打ち込むだけで、肘や肩が痛くてたまらなくなった。
ようやく、少しシカの出没も減ってきたようだ、今年は米が良くできてくれればいいと思う。
自分の側に余裕が出来てようやく、動物たちも大切な生き物なのだと感じ始めるようになった。
何となく安心してしまったのか、地域の草刈りをすっぽかしてしまった。
「ごめんなさい」人に会う度に謝ると、
「だれにでもあることじゃ、無理のない時に出ればいいよ」といってくれる。
1+1じゃわからないことが、世の中にはたくさんある気がする。
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2016.07.21 / Top↑
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